前々回の記事(参考)にて「グループディスカッションで建設的に話す方法」をお伝えしましたが、
当記事では、その議論の進め方を、実際に企業にて取り扱われるテーマを用いて具体的にお伝えします。
実際に自分がそのテーマに取り組む際にはどう考えるかを意識して読み進めてみてください。
目次
答えのないグループディスカッションの場合
※グループディスカッションのテーマとして「成功を定義せよ」という例で見てみます。
(外資系投資銀行であるゴールドマンサックスなどで出されましたが、普通のメーカーや人材などでも似たテーマは出される可能性は大きいので、一般的なグループディスカッションとして大いに参考にしてください。)
ブレーンストーミング⇔構造化
1:目的共有(何を持ってして目的を達成できたとするのか)
2:アイディア出し(ブレーンストーミングを行う)
3:論点抽出
4:まとめと結論・意思決定
各段階の詳しい説明は以下の記事に書いてありますので、まだ読んでいない方はぜひそちらから読んでみてください!
【GD初心者必見!】グループディスカッションの基本的な進め方
以下では各過程の簡単な説明と、具体的な例を挙げていきます。
1:目的共有
何をもってして成功を定義できたと結論付けるのか、ということをGDのメンバーの中で検討します。
【例】
・・・「誰から見ても成功者である、という人はどんな要素を持っているか」という方向で進めよう。(ということになったとする。)
2:アイディア出し
目的を共有したあと、それを前提にしてブレーンストーミングを行い、それぞれがテーマに対して思う意見を出し合います。
【例】
・・・みんなにとっての成功って何?
3:論点抽出
出しあった意見を整理します。
意見をどのような軸で分けるとうまく分けられるか(もれなくダブりなく分けられるか)を考え、それぞれの枠で分類します。
【例】
・・・どうやら「精神的な成功」と「物質的な成功」(第一の軸)、さらには「自分から見た成功」と「他人から見た成功」(第二の軸)があるようだね。(とか言いながらこれら2つの軸で4つの箱を作る。(フレームワークの作成))
具体的に図示すると以下のような図になります。
図示の例を出しましたが、必ずしも図示する必要はありません。
特にオンラインの場合は図示するのも時間がかかりますので議論の進行に差し障る可能性が高く、
場合によってはむしろ悪手となる可能性すらあります。
その場合は文章で4つの分類を箇条書きし、その下に意見を分類して書くなど、
わかりやすく簡易にまとめられるような工夫をしましょう。
4:まとめと結論・意思決定
最初に立てた前提や構造化した分類軸をもとにして、解答として適切なものを選んで最終的な結論とします。
【例】
・・・「誰から見ても成功者である人が明らかに持つ特徴だから、『他人から見た』『物質的な』成功だよね」ということで、書き付けたアイディアの中から「お金」とかをとり出してまとめていく。
むしろ、根拠なくすべてフレームワークに当てはめて考えたり、自分の思いついたフレームワークを全部押し付けて考えてしまうのは、かえって思考停止しているように見られたり、また他人の意見を聞かない協調性のない人として見られたりと、逆効果に働くことさえあります。
フレームワークを使用する際は、全員の意見をあてはめられるよう軸が見つかり、かつ、それを使用することで解決策を判断する軸として有用に働く(今回の場合は、この軸を使うことで「他人から見た」「物質的な」成功という、最も客観的な成功の枠組みを導き出せる)場合にはじめて使用することができると思います。
あくまでフレームワークを「押し付ける」のではなく、フレームワークを「もとにしてみんなで考えを深める」ことに重きを置くようにしてください。
次はものを売る戦略(マーケティング戦略など)のグループディスカッションの基本的な流れです。
答えのあるグループディスカッションの場合
※ものを売る戦略(マーケティング戦略など)のグループディスカッションのテーマ例として、
「三田市のバスの売り上げを1.5倍にせよ」というものを考えてみます。
(コンサルでよく出されるので、今コンサルで出されたテーマとします)
ブレーンストーミング⇔構造化
1:目的共有
・・・言葉の定義、主体設定、目的設定
2:論点抽出(問題点や市場の分析)
・・・フレームワークの活用。よく使うのが現状分析(3C分析+4P分析)、戦略策定(ポジショニング、ターゲット設定、コンセプト決定)です。
これら3C分析、4P分析、戦略策定3点セット、は覚えておいてください。
3:アイディア出し
4:まとめと結論・意思決定
1:目的共有
◎言葉の定義
・・・「三田市のバス」とは何か?を明確に定義付けます。
ここでは「三田市が運営する市営バス」としました。
あまり限定しすぎてはいけませんが、ある程度主観が入ったり分析しやすいように限定してもいいです。
◎主体設定
・・・課題を解決したいのが誰か、です。
この場合、妥当に「三田市バスの社長」の依頼としました。そうすることで、解の実行可能性が議論できます。
主体を設定しない場合、「国の助成金を出して、三田市バスのバス数を3倍にする」などの解決策でも良くなってしまいます。
主体設定の議論が甘いと本質からずれた回答を結論にしていることに気づきにくくなってしまいます。議論することを忘れがちなところでもあるので、しっかりと議論をしておきましょう。
◎目的設定
・・・「バスの年間売り上げを1.5倍」です。ここで
売り上げ=単価×利用者数
と”因数分解”して、単価を上げるのか、利用者数を上げるのか、について簡単に意見交換してもいいです。
しかし、後に述べるように、価格や利用者数を増やす戦略はターゲットとコンセプトを明確に設定したらどちらも自動的に決まる面が多いです。
単価を上げる、利用者数を増やすために○○する、というのは結局アイデアですから、
最初にいきなりアイディアベースの解決策を挙げるのではなく(それは仮説として頭の中に持っておくにしても)、
最初は分析から入るほうがコンサルとしてはセオリーどおりのグループディスカッションですね。
2:市場分析と問題点把握~3:アイディア出し~4:まとめと結論・意思決定
一挙に解説します。
まず大事なのが、フレームワークの活用です。
よく使うのが現状分析(3C分析+4P分析)、戦略策定(ポジショニング、ターゲット設定、コンセプト決定)などです。
3Cの視点は必ず見失わないで下さい。
以下戦略を作っていきます。必ずしもこれらフレームワークに従わなくても構いません。
例えばバスの売り上げを上げる戦略なら、「中距離を安価で移動できる手段」がポジションとして挙げられます。
そうバスをポジショニングをすると、タクシー、電車などが競合になります(3C分析の競合、において)。
「ポジショニング」でバスを「中距離の安価な移動手段」とすると、サラリーマン層が一番大きな市場になりそうです。
だからサラリーマン層に対してアプローチをするのが重要です(市場分析、ターゲットの設定)。
「サラリーマンがバスを使わない理由は何か?」をブレーンストーミングなどを利用して要素列挙していきます。
この際に4P分析を使用すると、視点を見落とさずに効率的に分析ができるので、覚えておくとよいでしょう。
4P:居心地か(Product)、金か(Price)、場所か(Place)、知名度か(Promotion)
これらの問題点を解決するアイディアを出していきます。
問題点を細かく具体的に同定できているほど、それをもとにして考えるアイディアは明快で説得力あるものになります。
朝のオフィス街行きのバスの居心地を改善し、チケット制でサラリーマンを乗せる。
このように、「営業マンを多く雇用して各オフィスビルを巡回させるとよい」という結論にたどり着きます。
まとめ・補足
いかがだったでしょうか?
「三田市バスの売り上げを拡大」という問から、「営業マンを雇う」という解決策が出てきましたが、
これは分析をせずいきなりアイデアベースで意見を交換し始めた場合には出てこない案ではないでしょうか。
また、もし仮に出てきたとしても、今回のようにしっかりと手順を踏んで導き出した場合に比べると、
その説得力は全く違ったものになるでしょう。
「現状分析」の上に「課題抽出」を行うことにより「なぜ人はバスに乗らないのか」という理由が明確になってきます。
その上でアイディアに意味が出てきます。それまでに出てきた意見を「構造化」し「共有」することで初めて、議論が積み重なるのです。
短い時間とは言え、アイデアベースのありきたりな解決策にしないために、まずは「構造化」を行って議論をまとめ、先に進める礎を作るのです。
この礎はいくつか作りますが、「目的」や「ターゲット」、「問題点」などを共有できるように明文化していくと、議論がわき道にそれにくいでしょう。
その際、常に「ゴールがどこか(目的が何であったか)」を忘れないようにしましょう!
最後に、今回の記事で取り上げた方法について、いくつか補足をしておきます。
議論がずれた場合の対処法
議論がずれた場合は、結論までの論理の道筋の中で「その意見がどこに位置するのか」について述べ、
今は違うところを議論すべきであり、そのアイディアは「保留して後ほど言及する」ことを言っておけばよいでしょう。
相手は聞いてもらったことに満足なので、保留されたまま議論に登場してこなくてもそれほど固執しません。
むしろ、そういうアイデアを思いついてはすぐ口にするような人は、次のタイミングでは新しく別のことを考えるものです。
「一通り言わせること」と「それを反芻して、相手の意見を聞いていることを一応示すこと」がポイントです。
このテクニック、「同義語反芻」については別の記事で述べていますので、それを参考にしてください。
見られるポイントについて
実際はここまで綺麗に具体策まで議論することは難しいでしょう。
理想としてこのくらいを目指して下さい(もちろんこれ以上に良い戦略を考えられればベターです。)
また、実際に必ず売れると確信できる戦略であるというよりも、そこに至るまでの思考プロセスが論理的に説得力を持っているかどうかを見られます。
定量的な根拠について
ここでは解説しませんでしたが、普通は市場規模の見積もり、というプロセスが入ったりします。
その場合、今回は「サラリーマンが市場規模として一番大きい」とある程度曖昧な根拠でしか書かれていなかった部分が、
より具体的な数字となり、より強い根拠になります。
そして、「朝のサラリーマンを2倍にできれば、売り上げは1.5倍になる」などのように、“数量感”をある程度示せるようになり、より説得力が増します。
「2倍」の根拠はそこまで細かくつめられなくてもいいです。
ただ、「全体を上げて1.5倍」とかいうよりも、「全体の中で半分の売り上げを占めるココを2倍で、全体として1.5倍」など、多岐に渡る顧客を分解してその中からアプローチすべきターゲットを絞ることでかなり論理としては強いものになります。
結論にたどり着いた根拠を数値に裏付けられたより説得力のあるものにすることができるし、
施策としてもアプローチすべき対象を絞ることで、より効率的に結果を出すことができる策略になるからです。
次は:テクニック①要素列挙